アメリカの PixelOptics(ピクセルオプティクス)社は、本を読むときに下を向くだけで、老眼の度数に切り替わるメガネ「emPower!」を開発した。現在、商品化を進めている。
emPower! は、見たい!と思ったときに瞬時にピントが合うほか、今までの遠近両用メガネよりも視野が広く、見え具合もよいのもポイント。さらに、3つのモードを切り替えることで、さまざまなシーンに合わせて使うことができる優れものだ。
瞬時にピントが合う仕組みとは
レンズの度数が変わる秘密は、レンズの中に液晶の層があること。この液晶の中に弱い電流を流すことで、レンズの度数を変えることができるのだ。
さらに、デジカメや iPhone などにも使われている加速度センサーが頭の動きを感知。なにか読もうと下を向くだけで、老眼の度数に切り替わる仕組みとなっている。
3つのモードを切り替えられる
emPower! には3つのモードがあり、フレームについたスイッチで簡単に切り替えることができる。使うシーンによってモードを切り替えると、より便利に使えそうだ。
オートマチックモード
なにか読もうと下を向くだけで、老眼鏡に早変わりする。
マニュアルモード
普通の遠近両用メガネのように、レンズの上のほうを通してまっすぐ見たときには遠くが見えて、目線を下げてレンズの下の方を使ってみると近くが見える。
マニュアル・オフモード
度数切り替え機能がオフになり、レンズの歪み感が抑えられる。スポーツなど動きの激しいときには、このモードがおすすめ。
視界の広さは今までの遠近両用メガネの2~3倍
emPower! は、視野が広いのも大きなポイントだ。
PixelOptics(ピクセルオプティクス)社によれば、今までの遠近両用メガネに比べて、遠くは2倍近く、中間距離(パソコンの画面や手を伸ばしたくらいの距離)は3倍以上、近くのは2倍以上、それぞれ視野が広くなっているという。
遠く専用のメガネや老眼鏡に比べると、遠近両用メガネは構造上どうしても視野が狭くなってしまうのが欠点。しかし、その欠点をかなり解消していると言えそうだ。
左が今までの高級遠近両用レンズ。右が emPower! (エムパワー)。emPower! (エムパワー)のほうが、はっきり見える部分が広いだけでなく、直線も歪みが少ないのが分かる。
1回の充電で3~5日使える
emPower! は電気で度数を切り替えるので、フレームの中に電池が内蔵されている。専用のクレイドル(充電用の台)にセットすれば、2~3時間で充電できる。
1度充電すれば3~5日間使えるが、必要なときに電池が切れてしまうことのないよう、PixelOptics(ピクセルオプティクス)社では、毎晩寝るときに充電することをすすめている。
アメリカでは2010年後半に発売
PixelOptics(ピクセルオプティクス)社では、emPower! の商品化に向けて、アメリカ国内の一部でテスト販売を始め、2010年後半にアメリカ全土で販売を開始する計画だ。
さらに、ヨーロッパでも2011年の早い時期に発売する予定となっていが、日本での発売については、今のところ未定のようだ。
また、メタルフレームやセル(プラスチック)フレーム、さらにはふちなしなど、デザインやカラーも豊富に揃う予定となっている。
今までの常識を打ち破る画期的なメガネ
emPower! は、遠近両用メガネの欠点をかなり克服しているので、今までの常識を打ち破る、画期的なメガネになる可能性を秘めている。
ひとつのメガネで遠くも近くも見ることができる遠近両用メガネはとても便利で、多くのひとに愛用されている。しかし、遠く専用のメガネや老眼鏡と比べると、はっきり見える範囲が狭かったり、近くを見るのに意識して目線を下げなければいけなかったり、違和感を覚えたりと、悩みを抱えているひともいる。
emPower! は、今までの遠近両用メガネに比べて、はっきり見える範囲が広く、歪んだり不快に見える部分は少ない。すでに遠近両用メガネを使っているひとはよりよく見えるし、視野や違和感のため、今まで遠近両用メガネを使えなかったひとにも使える可能性が高い。
また、今までの遠近両用メガネでは、近くのものを見るときに少なからず不自然な姿勢をとらなければいけないところがある。しかし、emPower! なら、今まで通りに見たいものに顔を向けるだけで、自然な姿勢で見ることができそうなので、今までよりも読書や仕事を快適にこなせそうだ。
※2011年1月7日 18:43 加筆修正しました。