東京・西荻窪のメガネ店 glass工房602 では、店内の工房で手作りされた木製メガネフレームを販売して、人気を集めている。
木でできたフレームというと、値段もおおむね10万円以上と高く、実用品と言うよりも工芸品のように扱われ、かしこまった印象を持たれがち。そのためかデザインも個性的なものが多い。
しかし、木でできたフレームをもっと多くのひとに一般的なものとして掛けてもらいたいとの思いから、glass工房602 ではあえて一般的なデザインで作っている。また、価格は木の種類やデザインによって異なるが、35,000円程度からと他のブランドよりも安いのもうれしい。
今回は glass工房602 のご好意により、木製フレームを使わせていただくことになったので、その詳細や使用感などをレポートしたい。
普段のファッションにさりげなく取り入れられるデザイン
(写真1)東京・西荻窪のメガネ店 glass工房602の木製フレーム。顔になじみやすいカタチが魅力的だ。
今回筆者が使わせていただくことになったフレームは、家具や仏壇、ピアノの黒健やギターやバイオリンの指板などにつかわれている黒檀という木でできている。
顔になじみやすいカタチと、さりげなく主張する木目のおかげで、一見、普通の黒ぶちメガネのように見えるほどシンプルなデザインとなっており、普段のファッションにさりげなく取り込んで、気負わずに掛けられるのがうれしい。
また、セル(プラスチック)フレームのような光沢感がないことや木という素材が持つ暖かみのためか、とてもナチュラルな雰囲気なので、普通の黒ぶちメガネよりも洋服や帽子にもよくなじむのもポイントだ。
掛け心地はちょっと独特、だけど快適
(写真2)東京・西荻窪のメガネ店 glass工房602の木製フレーム。ストレートタイプのテンプル(つる)は、一般のメガネよりもあえてちょっと短いのがポイント。
軽くて掛け心地のいいフレームに対して、「頭を包み込むような掛け心地」という言い方をすることがあるが、glass工房602 の木製フレームの掛け心地は、悪い言い方かもしれないが、「頭をはさみ込まれているような感じ」の独特なものだ。
しかし、掛けていて不快な感じは一切なく、受け取ってから4日後に少し幅を広げてもらったものの、ズレたり下がったりすることもなく、快適に使っている。
glass工房602 の代表であり、木製フレームを自ら作っている佐藤八郎氏によると、メタルやセル(プラスチック)に比べて、木の表面には摩擦があるため、ずれることなくフィットするのだという。
受け取った直後から気になっていたことがある。それは、テンプル(つる)が短いのではないか?ということだ。そこで、佐藤氏に聞いてみたところ、あえて短めにしてあるのだという。
以前はテンプル(つる)をもっと長く作ったこともあるというが、そうすると、後頭部もしくは耳の後ろに強く当たってしまい、痛くなってしまうのだという。
試行錯誤の結果、このように短めにしたほうが頭や耳が痛くならないし、幅や形状を上手く調整すれば、木の表面の摩擦のおかげで十分なフィット感が得られることが分かり、現在の長さになったのだという。
(写真3)glass工房602の木製フレームにはバネ丁番(スプリング・ヒンジ)が使われている。
glass工房602 の木製フレームには、テンプル(つる)とフロントをつなぐ部分に、バネ丁番(スプリング・ヒンジ)と呼ばれるものが使われている。
バネ丁番には文字通りバネ(スプリング)が入っており、そのバネが伸縮することで顔の幅にほどよくフィットするようにできている。
チタンなどのメタル素材や、プラスチックフレームの素材として一般的なアセテートなどと異なり、木は硬く、柔軟性に乏しいのを、バネで補っているのだ。
また、木製フレームは使っているうちに、顔になじんでくるのだという。目に見えてわかるほど削れていく訳ではないのだが、少しずつ当たりがつくような感覚で、顔にフィットしてくるというのだ。
筆者は掛け始めてからまだ10日ほどなので、なじんできたという感覚は得られていないが、今後が楽しみだ。
自ら作り、販売する強み
長い時間掛けているうちに、こめかみのところの当たりがちょっときついことと、そのためメガネが前に飛び出てしまうことが気になってきた(※1)。
そこで、受け取りから4日後、掛け心地の調整をしてもらうために、glass工房602へ再び足を運んだ。
木製フレームというと、掛け心地の調整はできないと思っているひともいるかも知れないが、実際にはなんの問題もなく調整することができると、glass工房602 の佐藤氏は語る。一般的なメタルフレームやセル(プラスチック)フレームとは方法が違うほか、少し手間がかかるだけなのだ。
しかも、glass工房602では、フレームを作った佐藤氏が自ら、その場ですぐに調整してくれるので安心だと言えよう。
(写真4)木製フレームでも木を削ったりすることで、掛け心地を調整することができる。
今回はこめかみのところの当たりをゆるめるためにテンプル(つる)の根元、レンズを固定するフロントと接する部分を少し削って、調整してもらった。見た目に大きく変わるほど削ったわけではないが、こめかみへの当たりもゆるくなり、メガネが前に飛び出すこともなく、フィット感がよくなった。
フレーム作りを専門としているところであれば、glass工房602 よりも数多くの木製フレームを作っているだろう。もしかすると、作ることが専門のところのほうが、フレーム作りの技術は高いのかも知れない。
しかし、フレームを作っているだけでなく、レンズを入れ、掛け心地を調整し、メンテナンスまでこなしているところが、glass工房602 の強みと言えるのではないだろうか。
(※1)こめかみのところの締め付けがきついほうがメガネが下がりにくいと思われがちだが、きつすぎるとかえって前に押し出されてしまい、メガネが下がりやすくなってしまうのだ。
木でできたフレームをもっと多くのひとに一般的なものとして掛けてほしい
glass工房602では、「木でできたフレームをもっと多くのひとに一般的なものとして掛けてもらいたい」という思いから、あえて一般的なデザインに仕上げ、価格も35,000円程度(※2)からと木のフレームをしてはリーズナブルになっている。
このくらいの価格なら、セル(プラスチック)やメタルという一般的な素材のものと並べて、木のフレームも選択肢に入れることができるだろう。
また、最近では木調浪漫や BJ Classic Collection(ビージェー クラシック コレクション)といったブランドから、プラスチック(アセテート)素材を特殊な技術で加工することにより、木目調の質感をリアルに再現したフレームが発売されており、人気を集めている。
(写真5)木調浪漫 九 くわ 価格:32,550円
(写真6)BJ Classic Collection(ビージェー クラシック コレクション) P-501 woody teak 希望小売価格:33,600円
(出典)http://www.bros-japan.co.jp/products/products.php?mode=item&ctg=2&number=25
これらのフレームの素材はあくまでプラスチックなので、普通のメガネと同じように耳の後ろにしっかり掛けることができるほか、素材の弾力性もある。そのため、本物の木製フレームよりも、プラスチックの「木目調」フレームのほうが掛け心地がいいと感じるひとも多いだろう。また、glass工房602の木製フレームに比べて、価格も安い。
しかし、あと少しお金を上乗せすれば、本物の木製フレームが手に入るとすれば、「木目調」よりも本物の木のフレームがほしいと思うひとも多いのではないだろうか。木製フレームが35,000円程度から買えるのは、とてもいい買い物になると思う。
そして、本物の木のフレームでしか味わえないのは、使い込むほどに出てくる「味」だ。
glass工房602の佐藤氏いわく、毎日から拭きすることで、使い込むほどに色つやが増して、いい「味」が出てくるのだという。
さらに、すでに述べたように、使っているうちに少しずつ当たりがつくような感じで顔になじんでくるのも、本物の木のフレームならではと言えよう。
GLAFAS(グラファス)では今後も、掛け心地のなじみ具合や、長く使っていることで感じたメリットやデメリット、色や味わいの変化などをお伝えする予定だ。
(※2)木の種類やデザインによって価格は異なる。
glass工房602(グラスコウボウロージー)
glass工房602では、木製フレームのほか、セル(プラスチック)やメタルフレームのオーダーもできる。
- 住所:東京都杉並区西荻北3-17-8
- 最寄り駅:西荻窪
- 電話:03-5382-1062
- 営業時間:10:00~20:00(月~金)、10:00~19:30(日祝)
- 定休日:第1水・第3水
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