ドイツのアイウェアブランド Markus T(マルクスT)から、ブランド初となるリムレス(ふちなし)フレームが発表された。先日この新作を携えて来日した、デザイナーの Markus Temming(マルクス・テミング)氏へのインタビューとともにご紹介したい。
目次
アタッチメントで多彩な表情を楽しめるリムレス
(左)A1024 フロント:130 black テンプル:titanium line 389 gold
(右)A1017 フロント:130 black テンプル:titanium 130 black +Titanium add-on in 130 black
「EASE」と名付けられたこのシリーズは、アタッチメントを取り付けることで、さまざまなデザインに変化するのが最大の特徴。
レンズの周りに樹脂素材のアタッチメントを取り付ければリム(ふち)があるように見え、チタン製のアタッチメントを取り付ければナイロール(下半分ふちなし)のように見えるので、多彩な表情を楽しめる。
Markus T(マルクスT)
EASE
A1012
(アタッチメントなし)
Markus T(マルクスT)
EASE
A1012
(TMi-flex contour付き)
※TMiとはMarkus T(マルクスT)が開発し、特許を取得した樹脂素材。
Markus T(マルクスT)
EASE
A1012
(Titanium add-on付き)
レンズの固定するパーツにはネジを使用しない特許技術が使われており、レンズ裏面にネジや金具が露出しないので視界の妨げになりにくく、レンズも拭く際にもジャマにならない。この特許技術により、従来のリムレスよりもレンズを組み込む作業がしやすいのは、メガネ店にとって朗報だ。
テンプル(つる)をつなぐヒンジには、ネジを廃して軽量に仕上げた、Markus T(マルクスT)ならではのものを採用。テンプルやモダン(テンプル先端部のカバー)も極薄なので、軽くて掛け心地のよいメガネができあがる。
MARKUS T EASE Animatic - YouTube
自分の個性を表現したい人への逸品
(左)A1026 フロント:389 gold テンプル:titanium 389 gold + Titanium add-on in 250 purple
(右)A1015 フロント:130 black テンプル:titanium 130 black + TMi-flex contour in 630 black
アタッチメントによって多彩な表情を生み出すという、「EASE」のデザインは、非常に革新的でファッション性にも優れている。最小限のパーツで構成されるリムレスだからこそ実現したデザインと言えよう。
機能美やミニマリズムを感じさせるメガネを掛けたい人、自分の個性を引き出し、表現できるメガネを掛けたい人には、ぜひおすすめしたい逸品だ。
写真で見る「EASE」コレクション
Markus T(マルクスT)
A1016
フロント:335 silver
テンプル:titanium line 335 silver + TMi-flex contour in 662 rose
Markus T(マルクスT)
A1017
フロント:130 black
テンプル:titanium 130 black + Titanium add-on in 130 black
Markus T(マルクスT)
A1023
フロント:335 silver
テンプル:titanium 335 silver + TMi-flex contour in 622 petrol
Markus T(マルクスT)
A1025
フロント:130 black
テンプル:titanium line 130 black
A1031
フロント:215 grey
テンプル:titanium 215 grey
Markus T(マルクスT)
A1026
フロント:389 gold
テンプル:titanium 389 gold + Titanium add-on in 250 purple
マルクス・テミング氏へのインタビュー
Markus Temming(マルクス・テミング)氏
GLAFAS(グラファス)
Markus T(マルクスT)のように、素材を一から作っているアイウェアメーカー、ブランドは非常に珍しいと思いますが、その理由を教えてください。
マルクス・テミング氏
我々は常に最高の解決策と最高の素材を探し求めています。メタルではチタンがベストな素材だと信じて使っていますが、プラスチックにはベストだと思える素材がなかったのです。メガネフレーム用のプラスチックとして、以前から広く使われているアセテートという素材がありますが、アレルギーが生じる恐れがありますし、長く使っていると壊れやすいのも問題です。我々が求める素材が、この世の中になかったから、新たな素材を開発しようと決意したのです。
GLAFAS(グラファス)
しかし、素材を開発するのはとても大変だったのでは?
マルクス・テミング氏
誰もが「NO!」と言うような、本当に大変な仕事でした。まずはプラスチック業界のリサーチから始めて、その後、スイスにある大きな会社と出会いました。その会社が我々のアイデアに興味を持ってくれたおかげで、現在使用している素材「TMi」の開発を進めることができたのです。
GLAFAS(グラファス)
素材を開発するだけでも驚きですが、オフィス、さらには街やホテルまでを作ってしまうのはさらに驚きです。メガネ以外のものまでデザインする理由や思いについて教えてください。
マルクス・テミング氏
私はプロダクトデザインが大好きなのです。私は最初にメガネのデザインを学びました。メガネのデザインで得た知識を活かして、今ではさまざまな物をデザインしています。オフィスが移転するのをきっかけに、新しいオフィスで使う照明やデスクを自分たちでデザインすることにしたのです。
自分たちのオフィスで使うプロダクトをデザインしてみたら、既製品とは異なる、素晴らしい特別なものができたと思いました。そこで、自分たちでデザインしたプロダクトの販売を始めました。さらにソファーやホテルをデザインし、来年からは家具を販売する計画です。でも、これからも中心となるのはメガネですよ!
Markus T(マルクスT)のオフィスにあるセミナールーム
GLAFAS(グラファス)
Markus T(マルクスT)のメガネをどのような人に、どのように使ってほしいといった思いはありますか?
マルクス・テミング氏
我々にとって、ブランド名は重要ではありません。フレームに大きなブランドロゴも入っていないですし。ブランド名でメガネを買うようなひとではなく、自分をよく見せて、きちんと快適に過ごしていきたい人に、我々のメガネを使ってほしいと考えています。そんな我々の思いを、これからも伝え続けていくつもりです。
GLAFAS(グラファス)
日本のメガネ市場や日本のユーザーについて、どのように考えていますか?
マルクス・テミング氏
長い歴史があり、メガネ店のレベルが高いことが、日本とドイツに共通していると思います。日本のユーザーは新しいものに敏感で、機能性だけでなくファッション性にも非常に関心が高いようです。また、プロダクトの奥に込められた特別な思いなどにまで目を向けていると感じています。
GLAFAS(グラファス)
Markus T(マルクスT)は、日本のメガネ市場にマッチしていると思いますか?
マルクス・テミング氏
非常にマッチしていると思います。日本の人々はぱっと見だけで判断せず、プロダクトに込められた深いところまで見てくれますからね。
GLAFAS(グラファス)
国別の売上比率について教えてください。
マルクス・テミング氏
ドイツが40%ですが、日本を含むアジアも35~40%を占めています。
GLAFAS(グラファス)
ドイツに匹敵するほどのシェアを持つアジアについて、どのくらい意識してデザインしていますか?
マルクス・テミング氏
常に世界中から情報をインプットしていて、この地域では今こういうものが流行しているといった認識は持っています。だからといって、デザインを変えるようなことはしません。Markus T(マルクスT)は、時が過ぎても色あせることのない、タイムレスなアイウェアとしてデザインしているからです。
A1016
フロント:335 silver
テンプル:titanium line 335 silver + TMi-flex contour in 662 rose
A1017
フロント:130 black
テンプル:titanium 130 black + Titanium add-on in 130 black
GLAFAS(グラファス)
今季の新作「EASE」のコンセプトなどについて教えてください。
マルクス・テミング氏
20年前に会社を始めた頃から、「リムレスは作らないのか?」と言われて続けてきましたが、私はリムレスが好きではなかったのです。しかし、メガネのトレンドが移り変わる中で、ここ数年デザインがシンプルになってきたのを受けて、「今こそ、リムレスを作るべき時だ」と思い、開発を始めました。
リムレスを作るにあたっては、メガネ店とエンドユーザーの双方がほしがるものを作るべきだと考えました。
メガネ店から見ると、リムレスはふちのあるメガネに比べてレンズを組み込むのが難しく、レンズが割れやすいという欠点もあるため、敬遠されがちです。まず、それらの欠点を技術で克服することを目指しました。
エンドユーザーに向けては、豊富なバリエーションの中から、自分にピッタリのメガネを選べるようデザインしました。レンズのカタチは同じでも、アタッチメントを取り付けることで印象を変えて、個性を表現できるようにしたのです。
GLAFAS(グラファス)
多くのブランドは、リムレスはレムレスとしてデザインしていると思います。しかし、この「EASE」は、アタッチメントを取り付けることで、「リムレスなのにリムレスではない」ような見せ方もできるというわけですね。
マルクス・テミング氏
Not like rimless, but rimless!
(リムレスのようではないけれど、リムレスなのです!)
GLAFAS(グラファス)
その通りですね!
GLAFAS(グラファス)
他のアイウェアブランドで好きなもの、気になるものはありますか?
マルクス・テミング氏
他のアイウェアブランドは見ないようにしています。なぜなら、Markus T(マルクスT)の哲学を維持し続けるためです。
GLAFAS(グラファス)
では最後に、マルクスさんにとって、メガネとは何ですか?
マルクス・テミング氏
自分の夢を達成するための、とても大切な一歩です。プロダクトをデザインし、作り上げることが私の夢でした。そのための第一歩がメガネだったのです。メガネについて学び、メガネを作り続けてきたことで、ものづくりについての深い知識と経験を得ることができました。メガネから得た知識と経験があるからこそ、さまざまなプロダクトをデザインして作り上げるという、自分の夢に近づくことができたのです。
GLAFAS(グラファス)
マルクスさんの人生において、メガネは本当に大切な存在なのですね。ということは、これからもメガネを作り続けますよね?
マルクス・テミング氏
もちろん!