毎日新聞などの報道によると、福井県鯖江市に本社を置くメガネフレームメーカーの野尻眼鏡工業が、福井地裁から破産手続き開始決定を受けたことが明らかになった。
野尻眼鏡工業は1947年創業。金を用いた高級フレームや、PRIVATE LABEL(プライベートレーベル)、Pinky&Dianne(ピンキー&ダイアン)などライセンスブランドのフレームをメインに製造していた。
1989年には中国・上海に現地法人を設立するなど、同業他社に先駆けて中国へ進出。チタンフレームやOEM(相手先ブランドによる受託生産)なども手がけ、ピーク時の1997年12月期には年商約44億円を計上した。
しかし、近年は景気低迷などの影響から、主力とする金のフレームの売上が減少。2010年12月期には、年商15億9200万円まで売上が落ち込んでいた。
また、中国進出にともなう投資が負担となり、借入依存型の資金繰りが慢性化。人員削減などのリストラを推進したものの、業況を回復することができず、2012年2月には業務を停止。同年3月に、福井地裁に自己破産を申請していた。
負債総額は約37億8000万円となっている。
関連リンク
野尻眼鏡工業の歴史
会社沿革
1947年
野尻眼鏡製作所として創業1960年
本社工場新設1967年
法人化:野尻眼鏡工業株式会社となる1988年
株式会社エヌティ光学設立1989年
中国上海野尻眼鏡有限公司設立1992年
株式会社服部セイコー・セイコーエプソン株式会社資本参加1993年
中国上海精科光学有限公司設立
中国上海福嘉宝飾有限公司設立1995年
株式会社ノジリ設立1997年
中国上海福井国際貿易有限公司設立2001年
株式会社エヌティ光学本社に合併2003年
中国上海野尻光学有限公司設立2004年
中国上海野尻光学有限公司新工場竣工2005年
中国上海野尻光学有限公司が精科光学・福嘉宝飾を吸収合併http://web.archive.org/web/20090221222632/http://www.nojiri-opt.jp/company/index.html
世界有数のメガネ産地である福井・鯖江の現状
◆福井県のホームページには次のような記述が見られる。
産地の現状
福井県の眼鏡産業は100年を超える歴史を持つ、本県を代表する地場産業です。
福井県における眼鏡枠の生産量は、全国の90%以上を占めていますが、近年では、中国企業とのOEM受注競争が続く中、円高や個人消費の冷え込みに伴い、国内外の市場が低迷するなど、産地は厳しい状態にあります。
産地では、新素材の開発や産地統一ブランド「THE291」の確立、県内企業の自社ブランドを集めたショールーム「グラスギャラリー291」の開設など、厳しい状況を乗り越え、さらに発展していくためのさまざまな取組みを行っています。
◆鯖江市のホームページには次のような記述が見られる。
産地の現状とこれから
低コストでの生産が可能な東アジア地域の製品が世界規模で台頭する現在、産地は国内のほかの「ものづくり産地」同様の悩みを抱えています。そのような中、世界を代表する眼鏡産地であり続けることを目指して、当面する課題の解決に産地をあげて取り組んでいます。
最近では、長年の眼鏡製造で培われた加工技術を活かして、精密機器や医療分野などへの参入を試みる企業も数多く見られるようになり、産地は次世代に向け一歩一歩確実に歩み始めています。
今後も、眼鏡産業活性化のために業界と行政、関係機関が引き続き連携を深めながら、更なる発展に向け取り組んでいきます。
◆「眼鏡産地の盛衰 -福井県・鯖江市とイタリア・ベッルーノ産地比較のケース-」と題した論文には、次のような分析が見られる。
深刻な福井・鯖江産地
1970 年~80 年代に、オイルショックや円高ショックを乗り越えて、チタン素材のフレームや、形状記憶合金フレームなどの新素材加工技術の開発11で順調な成長を遂げていた福井・鯖江が世界的な眼鏡産地としての主導権を失い始めるのは、1993 年頃からである(図6)。バブル崩壊による景気低迷や円高、価額破壊の進行などの影響もさることながら、中低級品分野では中国企業が大きな力を持ち始めている一方、高級品分野ではファッションブランド(ライセンス)をもつイタリア企業が圧倒的な競争優位性を確立していることか
ら、日本の福井・鯖江の競争力は年々低下しているのが現状である。出荷額において、ピーク時の2000 年の1,239 億円が、2005 年には766 億円と38%も減少している。https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/bitstream/10119/8844/1/casebook2.pdf
(PDFファイル)