公益財団法人日本デザイン振興会は10月3日(水)、2018年度グッドデザイン賞の受賞結果を発表した。
2018年度グッドデザイン賞は、昨年を上回る4,789件の審査件数の中から1,353件が受賞。その中からメガネ関連の受賞対象をまとめてご紹介する。
メガネ [TouchFocus]
三井化学株式会社
※「グッドデザイン・ベスト100」を受賞。
メガネ [TouchFocus]
© JDP GOOD DESIGN AWARD
概要
今までの遠近両用メガネの課題に挑戦した、ワンタッチで遠近を瞬時に切り替えられる次世代アイウェア "TouchFocus"。既存の遠近両用メガネの「階段や運転時の距離感がつかみづらい」「見る距離に合わせた視線の移動が大変」などの不満に対し、電子回路と液晶レンズ技術で近方の視界をON/OFFすることにより、「視界の歪み」が少なく、広い視野で、より快適な遠方・中間距離・近距離の視界を可能に。従来のように、メガネに自分を合わせるのではなく、遠近の切り替えを自分でコントロールし、より自信をもって人生を楽しめるように、そんな思いのつまった新しいソリューションです。
デザイナー
Thomas Overthun, Executive Design Director, IDEO, Hortense Desodt, Senior Industrial Designer, IDEO
デザイナーの想い
メガネは常に身に着けるものであり、掛ける方のパーソナリティを表現し演出するものです。たとえ最新のテクノロジーを搭載しているアイウェアであっても、世の中の多くのウェアラブルディバイスのように、主張し過ぎてはいけません。また操作性や仕草に至るまで、さりげなく、自然でスマートであることが必要です。そこでTouchFocusでは、液晶レンズ技術により、必要な時だけにワンタッチでリーディングゾーンを登場させ、遠方から近方までの視界を自然な視線で提供することにこだわりました。さらにはIDEO社とフレームデザインを共同開発することで、人間工学思想に基づいた、機能美と様式美を満たしたフォルムのフレームに仕上げています。シンプルに美しいだけでなく、自然なON/OFF切り替えやバッテリー着脱の操作性においても、通常のファッショナブルなアイウェアにしか見えないように仕上げました。
詳細情報
審査委員の評価
遠近両用メガネの使用性を電子制御にて高めた点や、フレーム内に各部品を違和感なくレイアウトし、重量も従来の範囲で抑えるなど、新規性をむやみに強調する事なく商品としてまとめ上げた点は高く評価できる。また個性表現としてのフレーム形状、色、素材を多数そろえたラインナップ幅の広さにも好印象を受けた。全体として違和感のない自然な印象は、今後のウェアラブルデバイスのあり方の一つと言っても良く、さらなる広がりに期待したい。
眼鏡 [Air frame]
株式会社ジンズ
眼鏡 [Air frame]
© JDP GOOD DESIGN AWARD
概要
1.どんな眼鏡が良いかわからない人に誰にでも似合う安心感を提供するデザイン 2.眼鏡迷子(世の中のほとんど)の人に安心して掛けらる形の作ること眼鏡の歴史を集約(サマライズ)して正しいモデル(手本)になるようなかたちを作ることで低価格でも長く使えるクオリティを実現したい
デザイナー
ジャスパー モリソン
デザイナーの想い
0.1ミリの違いで印象が大きく変わってしまうのがメガネのデザインです。だからこそ、徹底的にデザインに取り組んでみたかった。一人ひとりの顔になじむと同時にリラックスしてかけられるもの。悪目立ちせず、控えめで、静かに日常生活に存在しているものを目指しました。
詳細情報
審査委員の評価
皆が良いとするオーソドックスなモノに安心感を覚えながらも、一方で自分らしさを追い求めたいという相反する欲求が、多くのユーザーにはあるだろう。アイコン性すらある眼鏡のオーソドックスな形の中に、つくり手のアイデンティティまで含ませて形を描くことはとても難しいが、このJINSの4タイプの眼鏡では、ディテールまでの丁寧なつくり込み、主張し過ぎないが、独自性のあるカラー展開により、それを成し遂げている。
メガネレンズ [ライフスタイルを快適にする老眼対策レンズ ロハス テン]
株式会社ニコン・エシロール
メガネレンズ [ライフスタイルを快適にする老眼対策レンズ ロハス テン]
© JDP GOOD DESIGN AWARD
概要
ロハス テンは、新しいタイプの老眼対策レンズです。パソコンやスマホの普及で今日の「見たい」環境は多様化していて、従来の老眼鏡や遠近両用レンズでは解決できない問題が増えました。ロハス テンは現代人のライフスタイルに合わせて4タイプのレンズから、最適な「見え心地」を体験して選ぶことができます。しかも、交換・作り直しが保証されているので、満足できる「見え心地」が必ず見つかります。
デザイナー
株式会社ニコン・エシロール 開発本部 オプティクスグループ マネージャー 宮崎謙
デザイナーの想い
45歳以上の多くが老眼に起因する見えづらさを自覚している現状で、メガネレンズにできることはないかという想いから、「どんな生活シーンで困っているか」、「どの距離の見え方を解決すれば快適か」など、ユーザーの声を徹底的にかき集めニーズを追究しました。その結果、ユーザーの要望に応える4タイプのレンズデザインを開発しました。旅行先でのパノラマや車の運転など、遠くが広く見える「アクティブ」。お出かけ先で街並みと手元のスマホがバランスよく見える「ウォーク」。家事をしながら少し先のテレビモニターもはっきり見える「ホーム」。デスクトップパソコンや模型作りなど、デスク周りが快適に見える「クラフト」。さらにデジタル化に対応し、手元の画面が自然な姿勢で快適に見えるよう配慮した設計です。老眼に悩まされることなく、いつまでも快適に趣味や日常生活を楽しんでもらいたいと思います。
詳細情報
審査委員の評価
ユーザーにとって、本当に自分に合うレンズ選定が難しいという課題をわかりやすくライフスタイル別に提案する事により、個々の使用者にとっての最適解に近づけた点が高く評価された。またその後のメンテナンス保証の手厚さもユーザーに対して誠実で好印象を受ける。
Kids eyewear [Miniboxx]
Arts Optical Company Limited
Kids eyewear [Miniboxx]
© JDP GOOD DESIGN AWARD
概要
Design for Children Age 3-12, Apart of the aesthetic look, safety and comfort wear are also our concerns. Frames are made of TR90 nylon with magnetic temple extendable loop to secure the frames on head. This extendable loop is made of TR90 nylon., resistant of extreme temperature and aging.
プロデューサー
Michelle Ng
ディレクター
Thomas Kwok Wai Lo
デザイナーの想い
"Intimate" is our design direction because we believe frames are with us 24 hours a day. Apart of safety, we also focus on the new technical design to make the frame lighter and stronger.
詳細情報
審査委員の評価
この児童用メガネのフレームには、独特な目盛がデザインされ、予定外に重さが増えないという前提のもと、子どもの年齢に応じて伸ばすことができる。ソフトビニールを採用したことで、快適性を向上している。
検眼フレーム [PD別フロント着脱式検眼フレーム 「スマートテスター」]
株式会社シャルマン
検眼フレーム [PD別フロント着脱式検眼フレーム 「スマートテスター」]
© JDP GOOD DESIGN AWARD
概要
眼鏡を作る過程で使用する仮枠に改善を加えました。 視力測定でレンズの度数を決定した後に、仮枠にテストレンズを入れて見え方の確認を行います。仮枠のフレームとテストレンズを入れるPDリングを着脱可能な構造にすることで、掛け心地の良いフレームと正しい瞳孔間距離での見え方を両立させることが可能になりました。また、同じサイズのPDリングを複数持つことで遠近両用レンズ、中近レンズ、近々レンズなどを瞬時に取り換えて見え方を確認することが可能になり、目的やシーンに合った眼鏡の複数所持の提案が容易になりました。チタン製で軽量、デザインもシンプルになり眼鏡店や眼科診療所などで快適な視力測定を行って頂けます。
デザイナー
株式会社シャルマン 企画統括部 商品開発部 石川周一郎
デザイナーの想い
今回のモデル商品開発・デザインを進めていくにあたり、まず仮枠を装着していただき視力測定を行う上で被験者への顔への負担(重量・圧迫感)及び装用時の見た目・フレームの掛け心地・軽さ・正確な視力測定のサポート・仮枠の保管場所のコンパクト化を目指しすとともに、機能性を重視した仮枠の開発。また性別を問わないカラーを施した商品です。
どこで購入できるか、どこで見られるか
検眼者向け専用ツールにつき、株式会社シャルマンまでお問い合わせください。
審査委員の評価
眼鏡をつくる過程で行う視力検査には、さまざまな要件(検眼フレームのかけ心地、測定の正しさ、目的の異なる複数のレンズの測定など)が求められる。この古くからある重層的な問題に対して、デザインの力で一気に解決している点が評価された。
ワークスペース [シンク ラボ]
株式会社ジンズ
ワークスペース [シンク ラボ]
© JDP GOOD DESIGN AWARD
概要
コミュニケーション環境は進化し続けているが、一方で一人で集中し深く考える時間(Deep Think)が持てなくなってきている。 集中を計測するメガネ「JINS MEME」で実施した調査によると多くのワーカーがオフィスでは集中が出来ていないことが明らかになった。 Think Labは、“世界一集中できる環境を目指す”ワークスペースとして、デザインと科学的エビデンス融合した集中空間を実現。 寺社仏閣の緊張とリラックスの空間的アプローチを参考にするとともに、「緑化」「照明」「サウンド」「姿勢(椅子)」「血糖値」とエビデンスに基づいたアイテムを導入し、 Deep Thinkに最適な環境をつくり出した。
デザイナー
藤本壮介建築設計事務所主宰 藤本壮介
デザイナーの想い
オフィスと寺社仏閣、一見関わりのないように思えるが、寺社仏閣の要素を盛り込み、人々が超集中状態へ入っていくためのシークエンスをつくり出すことで、これまでのオフィス空間にはない、あるいは今後のオフィス空間、社会に求められる、働くための環境を考えた。 また、これからのオフィス空間では、新しいイノベーションを起こすため、「知の探索」と同時に、物事を深く追求しカタチにしていく「知の深化」が重要である。Think Labには、カフェスペースを設けている。ここは、超集中状態の人々が集い、オープンなマインドでコミュニケーションし、コワークすることで新しいイノベーションが生まれることを期待している。歴史的な実例と、科学的なデータに基づき最適なシークエンスを生み出すことが、社会に新しい創造の場所を生むのではないかと考えた。
詳細情報
審査委員の評価
自社の商品である集中を計測するメガネの調査から一般的なオフィス空間では集中できていないことがわかったという。そこから、世界一集中できるワークスペースを作ることを目的に科学的アプローチから緊張とリラックスが共存する「神社仏閣」というキーワードを導き出し、神社仏閣の持っている集中を促す要素を空間に落とし込み、新しいオフィス空間を創出している。働き方改革が叫ばれる中、様々なオフィス空間が出来てきているが、ここまで思い切って「集中」ということを科学的に分析しながら作られたオフィスは他にはなくその独自性が評価された。
インタラクティブ・ディスプレイ [Touch The TouchFocus]
三井化学株式会社
インタラクティブ・ディスプレイ [Touch The TouchFocus]
© JDP GOOD DESIGN AWARD
概要
Touch The TouchFocusの制作にあたって、ワクワクする次世代体験の創造と、どなたにとっても親しみやすく分かりやすい操作性の共立を特に意識しました。なぜなら、このディスプレイが紹介するTouchFocusというアイウェアは、シニア世代が誰でも抱える普遍的な目の問題に対して、次世代テクノロジーでサポートする製品だからです。テクノロジーの説明や視界の体験はバーチャルな世界で展開する一方、ショーケース自体は美術館の展示品のような見え方を演出し、まるで実物のアイウェアを手に取るような操作から体験がスタートします。触れやすく、分かりやすく、でもワクワクしながら製品を理解・体験いただけます。
ディレクター
三井化学株式会社 新ヘルスケア事業開発室
デザイナーの想い
「Touch The TouchFocus」は、TouchFocusのテクノロジーを分かりやすく、でもワクワクさせながら体験いただくため、デジタルプロモーションで数々の世界的なアワードを受賞しているBIRDMAN社をはじめとした制作ユニットとともに共同開発した、全く新しい体験型デジタルショーケースです。最もチャレンジであったことは、リアルなTouchFocus製品を超えて、バーチャルにしか表せない最適なデジタルコンテンツを作り上げることです。具体的には、テクノロジー、視界の切り替え、デザインといった3つのキー要素をデジタルに説明していますTouchFocusを機能的に必要とする老眼症状を持った世代にも、分かり易いコンテンツであり、かつ、容易に操作しやすい構成であることにも拘りました。TouchFocusは、製品だけでなく、展示でも新しい体験の創造に挑戦していきます。
どこで購入できるか、どこで見られるか
TouchFocusお取り扱いの百貨店メガネサロンやメガネ小売店のうち限定店舗の店頭およびイベント
TouchFocus公式ホームページ
審査委員の評価
フォーカスを切り替えられる電子メガネという新しい商品の特徴を、非常にわかりやすい伝えることができる次世代のディスプレイ。インタラクティブな演出を持ちいることで、そのメガネがもたらす近未来を疑似体験させる。またこのディスプレイのデザインそのものにもインパクトがあり、実際に触って見たいと思わせるワクワク感を高めている。
めがねフェス [めがねフェス]
一般社団法人福井県眼鏡協会
めがねフェス [めがねフェス]
© JDP GOOD DESIGN AWARD
概要
めがねフェスは、「めがねよ、ありがとう」を合言葉に、眼鏡産業に関わる方や眼鏡小売店の方、めがね産地である福井県鯖江市を中心とした住民の皆様、また、全国のめがね好きの皆様に向けた、めがねに感謝するためのイベントです。「めがね供養」を中心とし、めがねグッズの販売やワークショップ・めがねグルメグランプリ、めがねをかけたアーティストのステージ、ファッションショーやメガネリンピックなど、会場はめがねづくしで、全国のめがね好きが1万人以上集まるイベントとなりました。眼鏡産業にポジティブなイメージが育ち、産地に興味を持ってくださる方が増え、めがねミュージアムの来館者数も年々増えています。
デザイナー
GOOD MORNING 三田村敦、真田悦子、清水万智
デザイナーの想い
「めがねよ、ありがとう。」シンプルな言葉ですが、ここにはめがねの仕事に携わる方や、めがねがなくてはならない方のたくさんの思いが詰まっています。開催を重ねるにつれ、全国から本当にめがねが大好きな方が集まってくださり、リピーターも多く見られます。そんなみなさんのめがねに対する熱い思いを、できるだけ形にしたいと思っています。また、産地の皆さんには、めがねの仕事に誇りをもってもらいたい、地元の子供達にもカッコイイと思ってもらいたい、その上でデザインの力は欠かせません。全てをデザイナーがプレゼンテーションしていくのではなく、産地の皆さんが自分たちで創意工夫していく部分も大切にしていきたいと思っています。めがねフェスをきっかけに、歴史ある高品質な福井・鯖江のめがねを知ってもらえればと思います。また、だんだんと人材不足も深刻になっているめがね産業への就業のきっかけにもなることも期待しています。
詳細情報
審査委員の評価
メーカーは、販売会社やお店に卸しており、ユーザーと直接顔が見える関係にはない、という例は多い。そうした課題に着目し、めがね愛好者と、ユーザーとの接点がない、めがねメーカーが出会える場を楽しくつくりだしている点を評価した。